本研究は、都市レベルにおける「経済発展とCO2排出量の関係性」を明らかにし、都市の気候変動対策を進める上で重要なCO2排出予測法を開発した。また、自動車買い替えに焦点を当てた動的離散選択分析を用いて、車検制度の見直しが自動車由来のCO2排出減少に寄与することを発見した。世界37か国を対象にしたアンケートデータを用いた分析を通して、エネルギー費用負担、生活満足度、健康状態、経済格差の関係性についても明らかにした。
【学術的意義】
(1) (IF=8.426)はエネルギー研究分野のトップジャーナル、(2) (IF=4.865)は環境経済学のトップジャーナル、(3)は持続可能性研究分野のトップジャーナルであるNature姉妹紙にそれぞれ掲載され、学術的に高く評価された。また、Google Scholarによれば、(1)は4回、(2)は5回、(3)は2回それぞれ引用されており、学術的な波及効果も大きなものである。
【社会、経済、文化的意義】
(1)は九州大学と松山大学の合同プレスリリース(2018年7月19日)、日本経済新聞(2018年7月19日)、国立環境研究所の環境展望台(2018年7月19日)、(2)は日本経済新聞(2018年7月25日)、(3)はアメリカ科学振興協会が提供するオンラインニュースサービスのEurekAlert(2019年6月11日)などのマスメディアでそれぞれ紹介され、政策決定者や研究者を含めた多くの方々に有用な情報を提供しており、社会的な波及効果が大きな成果である。
【論文】
(1) * “An analysis of urban environmental Kuznets curve of CO2 emissions: Empirical analysis of 276 global metropolitan areas,” Hidemichi FUJII, Kazuyuki IWATA, Andrew CHAPMAN, Shigemi KAGAWA, and Shunsuke MANAGI, Applied Energy, Vol. 228, 2018, pp. 1561-1568. (https://doi.org/10.1016/j.apenergy.2018.06.158)
(2) * “Role of vehicle inspection policy in climate mitigation: The case of Japan,” Yuya NAKAMOTO and Shigemi KAGAWA, Journal of Environmental Management, Vol. 224, 2018, pp. 87-96. (https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2018.07.028)
(3) * “Multinational life satisfaction, perceived inequality and energy affordability,” Andrew CHAPMAN, Hidemichi FUJII, and Shunsuke MANAGI, Nature Sustainability, Vol. 2, 2019, pp. 508-514. (https://doi.org/10.1038/s41893-019-0303-5)