
9人の参加者からなる会議を考えてみる。この会議では、9人のうち5人以上の賛成で、議案(予算案や何らかの企画案など)が承認されるとしよう。ある日、この会議における承認のボーダーラインとなる票数(=5票)を、例えば、7票に変更すべきという案が出てきたとしよう。この新案は、現行のルールで承認される必要があるので、5票を獲得することで新案の7票に変更できる。しかし、仮にその新案が承認されてボーダーラインが7票になった後に、ボーダーラインをやはり5票に戻そうという案が出てくると、今度はその承認には7票の賛成が必要となり、「ボーダーラインの変更」という同種の案の承認であるが、その承認のハードルは変化することになる。一般に、ひとたびボーダーラインが上昇してしまうと、そこからの変更はハードルが高くなる。本研究では、このような「承認ルールを変更するための承認ルール」としてどのようなものが妥当であるかをゲーム理論の枠組みで分析した。
私たちは、社会の中で数多くの仕組みに囲まれて暮らしている。組織の中で何かを決める際に用いる「投票」という仕組みは、最も親しみのある方法の一つである。しかしながら、誰・何に票をいれるかを考えることはあっても、投票という仕組み自体について考えることは比較的少ないように思われる。本研究では、ゲーム理論という枠組みを用いることで、投票のルールや仕組み自体を数理的にモデル化して分析対象としている点に特徴がある。
【論文】
(1) *Abe, T. (2025). Core thresholds of symmetric majority voting games. Games and Economic Behavior, 152, 199-215.
(2) *Abe, T. (2022). Stable coalition structures and power indices for majority voting. Journal of Public Economic Theory, 24(6), 1413-1432.
(3) *Abe, T. (2018). Stable coalition structures in symmetric majority games: A coincidence between myopia and farsightedness. Theory and Decision, 85, 353-374.
阿部 貴晃准教授